<八日目の蝉>



この映画は私にとって非常にインパクトのある映画でした。
その理由を簡単に言うと、私が多くの人に伝えたいと思っている内容だと思ったからです。


しかしその内容自体は、受け取り方によっては暗くて重い部分もあります。
私にとって最もインパクトのあった部分は、主人公の女性が身ごもった赤ちゃんを明るく育っていこうと、
映画のクライマックスで心に決めた事でした。


彼女は自分が育った環境が原因で、両親と心から打ち解けることができないでいました。

一つの事件により、生まれてから4歳まで、ある1人の女性に愛情深く育てられました。
そしてあることをきっかけに、本来の両親のもとに戻るのですが、
そこから主人公の女性は情緒不安定な状態で幼少時期を過ごしていきます。

そして、母親の精神不安定な状態が1つの原因となり、両親からの愛を十分に受け取れずに育ちました。


主人公の女性は、学生のときに妊娠することになります。
妊娠をし、出産する意志を両親に打ち明けたことが一つのきっかけとなり、
思い出したくもない過去とおのずと向き合うようになっていきます。


生まれて数ヶ月後から4歳まで、母親以外の女性に育てられ、その時は愛を体感しながら育つわけです。
しかし、実母と生活するようになると、ちょっとしたボタンの掛け違いから愛の歯車が狂い続けてしまいます。

4歳の時に大きく環境が変わり、自分の本当の気持ちを押さえ込んで生活していかなければならなかった。

成長するにつれて、幼い頃自分が抱いていた感情も忘れてしまったわけです。

大人に成長した彼女の心の中には、常に暗い面影があり、
しかしそれもどこかで仕方がないことと本人は割り切っているような状態でした。


しかし映画の終盤で、幸せだった頃(4歳まで)を、
実際にそのとき過ごした土地をめぐることによって、少しずつ思い出していきました。

そして最後には、ある1枚の写真を主人公の女性が覗き込んだとき。
自分の内側にわずかに残っていた記憶を思い出したのです。

自分自身の過去をある意味否定し、押さえ込んで暮らしていかなければならなかった。

しかし、本当に彼女が望んでいたことは、愛と希望のある暮らしだったということを最後に思い出すのです。


大切なポイントを整理すると、
彼女はまず、自分自身で、ある1つの目標を立てました。

それは妊娠した子供を産むと言うこと。

しかし、彼女は自分が愛が薄い家庭に育ったため、子供を育てられるかどうかということに対し大きな不安があった。

そして、おのずと物語(人生)の流れは、自分自身の暗い過去と向き合う方向へと急展開していきました。

映画の中で主人公の女性が最後にたどりついたところは、奥深くにある彼女の幼少時代の記憶。
そこにたどり着いた時、彼女は心の底から大きな気づきとともに癒されるわけです。


私が多くの人に伝えてきたことの1つに
「自分の過去を見つめることにより、新しい現実を引き寄せることができる」というものがあります。


私たちの古い記憶(潜在意識)の中には、
今の私たちが前に進もうとすることに歯止めをかけてしまうトラウマのようなものもあります。
しかし、過去に体験したことを手に取って観察していくことにより、そこから新しい捉え方が生まれてくるのです。

このような体験をするとしないとでは、実は大きな違いがあります。

私たちの内側には深い潜在意識というものがあり、
そこに潜んでいる感情が私たちの今の現実(思考パターン)に大きく影響を与えています。


1つの映画を見ることで、こんなに多くの刺激を受けるということは、本当に素晴らしいことだと感じます。
カメラワークも本当に素晴らしい映画でした。



過去の体験を見つめること、そのときの感情に気づき、それが癒されることよって、今の私たちの考え方や行動に大きく影響を与えるということ。


このことを、私もまた改めて、多くの方へ伝えていこうと思えた時間でした。

2019年08月24日