夫婦の日和


朝起きたら青く澄みわたる秋の空が広がっていた。
朝食をとった後、川越の蔵の街にある老舗のお菓子屋さんへ、妻と歩いて買い物に行くことにした。


12月も近くなって少し肌寒くなってきたが、気持ち良い天気。
ゆっくり歩いていくと、赤間川でカモたちに出会った。
「ずんぶんぷっくりしてるね」
「そうだね、パンとかあげる人がたくさんいるからね」
そんな会話をしながら、川沿いを散歩しながら歩く。

最近になって、こうして川沿いを歩き、蔵の街へ出かけることが多くなった。
なんとものんびりしていい気分。

親戚からいただいた結婚のお祝い返しにと、老舗のお菓子屋さんで、色とりどりのお菓子を箱詰めしてもらい、
郵送の手配を済ませたが、ランチにはまだちょっと早い時間。

「うどんでも食べてく? 」と妻を誘ってみたが、「うん」と言わず(笑)。
じゃあ、とりあえず家に帰るかと帰路についたが、"温泉"という言葉が朝浮かんでいたことを思い出した。

そうか、温泉か!
早速妻へ提案。
「うん、まぁ、そうだね」
乗り気だか乗り気でないのかわからない感じではあったが(笑)、いざ温泉へと出発!

車で40分程の、湖のほとりにある温泉へ。
ゆっくり温泉につかった後、レストランで食事をしていると、ふと数年前の自分を思い出した。


私はこの温泉が好きで、よく一人で来ていた。よく来てはいたのだか、やはりどこか寂しい。。
食事をする時も、楽しそうなカップルを横目に、一人小さなテーブル席。。
いつか自分もパートナーと2人で来たい!


願っているときは、なかなか現実にならず、やきもきするものだが、
いざ叶ってしまうと、それがごく普通の日常にもなる。

しかし、あの時は熱望、いや渇望していたのだ。
今は、他のことで、まだ現実にならないと、悩んだりすることもあるけれど、
これらもきっと気づいたときには現実になっているのだろう。焦らずにいこう。


食事を堪能してレストランの隣にある展望デッキに行くと、きれいな湖と、周りに彩られた木々が待っていた。
所々紅葉していて、なんとも気持ちが穏やかになる。
少し肌寒くなってきたから、建物の中へ戻ろうとしたが、妻がもう一度、展望デッキの一番先へと歩いていった。

すると、先ほどまでは見えなかったが、デッキの先の方は傾斜になっていて、その少し下に、2匹のハクビシンがいた。
目の前に現れた2匹のハクビシン。もの珍しく見ているうちに、だんだんと手前にいるハクビシンに意識が合っていく。

その時。
まるでハクビシンが言っているかのように、
「今は大勢の人の前に出る準備をしている」というメッセージが私の心の内側に響いてきた。

ほう~!大勢の人の前か~~!
ならば。
「どんな準備?」とハクビシンを見つめながら心の中でたずねてみる。
「……」そうか。それに対する答えらしきものは、特に感じることができなかった。

ちなみに私はある動植物と向かい合ったときに、自分の内側でやりとりをすることがある。
あのまま建物の中に入っていったら、ハクビシンにも会えなかったし、なんとも良い機会をいただいたと嬉しくなった。


今となっては2人の日和。楽しい日々が続いている。


2019年11月22日