声をあげてごらん
ゆくえはばまずに
たとえ倒れてもあなたならできる
新しい知恵がある
歌に秘めたもの
浮き上がる声には私の音符
照れずに歌おう
今だけに
歌を越えてゆく
あなたの心
与えてゆけばつぼみが咲くよ
さぁめでて歌おうよ
声をあげてくよ
大切な歌だから
今日の流れに乗せて歌うよ
手を合わせて
たとえ空に向かう
あなたの心
急に閉じれば息が苦しくなるよ
今すぐ歌おう
羽を開いて
私がこの詩を書いたのは、ピアノのレッスンを受けているときでした。
私は幼い頃に1度だけ、姉が習っていたピアノの教室に行ったことがあります。
しかし、そのとき私は、「男がやるものじゃない」と言って、泣いて帰ってきてしまいました。
時は過ぎ、「ピアノを弾いてみたい」という奥底の願いに気づいた私。
40歳になってから叶えることができました。
ピアノを習い始めて5年が過ぎた頃、
ピアノの発表会で「歌の翼に」という曲を弾くことになりました。
ちなみに私は、幼い頃から音楽や歌うことに苦手意識がありました。
歌声が上手く出せないと言ったほうが正確かもしれません。
発表会で弾く曲(歌の翼に)を事前に聞いたときに、
自分の内側で悲しみみたいなものを感じました。
しかし、同時に弾いてみたいという強い気持ちも浮かび、弾こうと決めたのです。
そして、発表会に向けて練習が始まりました。
全体的に曲を弾けるようになった頃、
先程の詩を音符に乗せてつけていきました。
言葉を乗せるとき、私は、静まり返っている自分の内側から浮かび上がってくる言葉を
そのまま使っていきます。
つまり、深く考えることはしないのです。
そして、いざ発表会が数日前に近づいてくると、
ピアノを弾く私の腕と指は、何かにつかまれたかのように動かなくなりました。
それがあまりにも急だったこともあり、私は、その原因が何なのか? を
自分の内側で捉えていきました。
すると、過去の深く遠い記憶の中で体験したトラウマが原因だということに気がつきました。
それは、ピアノが弾けなくなってしまったという過去。本当に辛い体験だったのです。
そして不思議にも、数ヶ月前に音符に載せた言葉たちが、発表会の間近になって、
自分への大きな応援になっていたことに気づきました。
この言葉たちは、大きなチャレンジに向かう私に対し後押しをしてくれていたのです。
たとえ小さな発表会であっても、人の前でトラウマが浮かび上がった状態でピアノを弾くという体験は、
何にも変えがたい大きなチャレンジでした。
過去の辛かった体験を、その発表会を通し「ピアノを再び弾けて良かった」という
深く印象に残る体験に塗り替えることができたのです。
私はその発表会を終えた後、抱えていたトラウマを解放できたことにより、
ピアノに向かう姿勢が以前よりも積極的になりました。
新しい技術を身につけようという意欲も湧いてきたのです。
(歌に秘めた力 「歌の翼に」)